きりん先生とねこの親子のおはなし、その先へ
日本脳炎ワクチンを「生後6か月から」始めるという選択
漫画を読んでくださって、ありがとうございます。「3歳まで待たなくていいの?」「富山でも気をつけたほうがいいの?」――そんなふうに気になった方へ、根拠から受け方の手順まで、ていねいにお話しします。読み終えるころには「早めに受けておこう」と安心して思っていただけるはずです。
そもそも、日本脳炎ってどんな病気?
日本脳炎は、ウイルスを持った蚊に刺されることでうつる病気です。刺された人のほとんどは症状が出ませんが、ごく一部の方が脳炎を起こします。
こわいのは、発症したときの重さです。有効な治療薬はなく、命にかかわることがあり、助かっても、けいれん・まひ・知的障がいといった重い後遺症が残ることが少なくありません。「かかってから治す」のがとても難しい病気だからこそ、ワクチンであらかじめ防ぐことが何より大切です。日本脳炎は、ワクチンでしっかり予防できる病気です。
「富山だから大丈夫」とは、もう言えません
日本脳炎は西日本に多いというイメージがあり、富山は安心だと思われがちでした。ところが、富山県自身の最新研究がその常識をくつがえしました。
富山県衛生研究所の研究グループが、県内で捕獲された野生のイノシシ3,059頭を6年間にわたって調べたところ、日本脳炎ウイルスに感染した形跡を持つイノシシが県内全域に広がっていて、しかもその割合が年々増えていることが分かりました(2025年12月に医学雑誌に掲載、2026年2月に富山県が発表)。
| 年 | ウイルス抗体を持つイノシシの割合 |
|---|---|
| 2019年 | 4.2% |
| 2020年 | 4.4% |
| 2021年 | 11.1% |
| 2022年 | 10.8% |
| 2023年 | 10.3% |
| 2024年 | 23.1% |
イノシシは、その地域でウイルスがどれだけ活動しているかを映す「鏡」のような存在です。漫画できりん先生が見せたボードは、この富山の実際のデータがもとになっています。「うちは内陸だから」という安心の理由にはなりません。
また「富山には大きな養豚場がないから安心」という考えも当てはまりません。長崎県の対馬では、養豚場のない地域で住民が日本脳炎を発症し、イノシシからウイルスの感染歴が見つかった例があります。ブタがいなくても、イノシシを介して人に感染が起こりうるのです。
なぜ「3歳から」ではなく「生後6か月から」なのか
実は、標準的な開始時期が「3歳から」とされていることに、はっきりした医学的根拠はありません。乳児期は他の予防接種が多くスケジュールが混み合う、といった事情で決められた経緯があるとされています。
しかも「3歳より小さい子は発症しない」わけではありません。実際に1歳のお子さんや生後11か月の赤ちゃんが発症した報告があります。3歳を待つ間に、防げたはずの病気にかかってしまう――それは避けたいことです。
日本小児科学会も、ウイルスの活動が活発な地域に住む子どもには生後6か月からの接種開始をすすめています。富山県は、まさにその状況にあたると当院は考えています。
早めに始める、4つのメリット
- 0〜1歳は他の予防接種も多く、同時接種でまとめて受けられ、通院の負担が減る
- 3歳・4歳は最も注射を怖がる年齢。物心がつく前に始められる
- 「3歳になったら」と思っているうちのうっかり忘れを防げる
- 3歳未満は0.25mLと量は少なめだが、最後まで0.25mLで終えても十分な免疫がつく
【大切な手続き】3歳より前に受けるときは、まず保健所へ
3歳より前でも、定期接種(公費・無料)で受けられます。ただし、接種券(予診票)は3歳ごろに自治体から自動郵送されるため、早く始めたい場合はご自身で保健所に連絡して接種券を取り寄せる必要があります。この一手間で、無料接種ができます。
- 保健所(市の予防接種担当窓口)に「日本脳炎を3歳より前に受けたい」と連絡する
- 接種券(予診票)を送ってもらう
- 届いた接種券と母子健康手帳を持って、当院を受診する
接種券がないまま受けると自費になる場合があります。接種の前に、必ず接種券をお取り寄せください。ご不明な点は当院でもご案内します。
【お願い】当院での接種は予約制です
ワクチンの準備や同時接種の確認、待ち時間短縮のため、日本脳炎ワクチンの接種は予約制とさせていただいています。お電話(076-436-3715)をご利用ください。来院時は接種券(予診票)と母子健康手帳をお持ちください。予診票はご家庭で記入しておくと当日スムーズです。
副作用について ― 安心して受けていただくために
よくある副反応は、軽くて一時的です。現在のワクチン(乾燥細胞培養ワクチン)の調査では、主な副反応は発熱(約19%)、せき、鼻水などのかぜ様症状や、注射部位の赤み・はれ(約9%)で、ほとんどは接種後3日くらいまでにあらわれ、自然におさまります。
重い副反応は、とてもまれです。ごくまれにアナフィラキシーや急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などが報告されていますが頻度は非常に低く、昔のワクチンに比べ現在のワクチンではより少ないと考えられています。お子さんが守られる利益のほうが、まれなリスクをはるかに上回ります。早めの接種でも安全性は変わりません。
こんなときはご相談を
- 接種した場所のはれがひどく、どんどん広がる
- 高い熱が続く、または熱とともにぐったりして元気がない
- けいれん(ひきつけ)が起きた
- 接種直後に、じんましん・顔色が悪い・呼吸が苦しそうな様子がある
軽い発熱や機嫌の悪さは数日で落ち着くことがほとんどです。接種後30分ほどは院内や近くで様子をみていただくと安心です。気になることはいつでもお問い合わせください。
接種スケジュールの目安
- 1期初回(2回):生後6か月以降、6〜28日の間隔で2回
- 1期追加(1回):初回2回目のおよそ1年後
- 2期(1回):9歳以上13歳未満(できるだけ9歳で)
生後6か月から始めても、2期の時期(9歳〜)は変わりません。お子さんの月齢や他の予防接種の予定に合わせて、当院で最適なスケジュールをご提案します。
お電話でのご予約は 076-436-3715(くれはキッズクリニック)まで。
日本脳炎ワクチンは生後6か月から。早めの接種で、お子さんを守りましょう。
- 富山県衛生研究所ほか「富山県の野生イノシシにおける日本脳炎ウイルス等の抗体保有調査」Viruses, 2025年12月
- 富山県 報道発表(2026年2月)
- 厚生労働省「日本脳炎ワクチン」/乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン 添付文書
- 日本小児科学会「日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの接種の推奨」
- 本記事は一般的な情報提供を目的としています。接種の可否や具体的なスケジュールは診察のうえ個別に判断します。手続きの詳細は保健所または当院までご確認ください。
監修:くれはキッズクリニック 院長 草開祥平(小児科専門医)/最終更新:2026年6月