麻疹と麻疹ワクチンについての現状

麻疹と麻疹ワクチンについての現状

 

2024年3月から、麻疹が発生していると報道されており、ご心配の方も多いと存じます。

 

世界的には麻疹・風疹・おたふく風邪を1つのワクチンで予防できる、MMRワクチンを使うことが一般的なのですが、日本では麻疹・風疹の混合ワクチンを使っています。

 

現在、日本での麻疹・風疹ワクチンの流通が滞っており、ご迷惑をおかけしています。通常のクリニックでは1歳での初回接種のお子さんを優先しているため、ワクチン接種歴がない方はご心配されているのではないでしょうか。

 

当院ではワクチン接種歴のない方や、罹患歴、接種歴が不明な方について、海外で広く活用されているMMR-Ⅱというワクチンを輸入し、接種希望のある方に対応しております。
お値段は12000円(税込み)でご案内しておりますので、お電話でご予約ください。

 

 

なお、麻疹についてどのような感染症なのか簡単にまとめました。

 

麻疹は、世界中で発生する感染力の強いウイルス性疾患です。感染症の特徴は、発熱、倦怠感、咳、鼻水、結膜炎で、その後発疹がみられます。麻疹ウイルスに曝露すると、免疫を持っていない人の約90%が麻疹を発症します。伝染期間は発疹出現の5日前から4日後と推定されます。この病気は、空気感染で広がります。人と人との接触がなくても、公共の場で感染する可能性があります。

 

麻疹は、潜伏期、前駆期、発疹期、回復期からなります。

潜伏期:潜伏期間は6~21日(中央値13日)。

前駆期:2~4日間の前駆期は発熱、倦怠感、食欲不振を特徴とし、結膜炎、鼻汁、咳が続きます。もしあれば、麻疹の感染症として知られるKoplik斑が、典型的には発疹の約48時間前にみられます。

発疹期:特徴的な発疹は発熱の約2~4日後に生じます。発疹は赤い斑状丘疹状皮疹からなり、典型的には顔面と頭部から始まり下方に広がります。病変は初期には白化しますが、後期には白化しません。発疹は5~6日で消失し、出現した順に薄くなっていきます。

回復期:咳は麻疹後1~2週間続くことがあります。発疹後3〜4日目以降の発熱は麻疹に関連した合併症を示唆します。

 

日本では感染症法により、麻疹は全例保健所に報告する必要があります。

届け出基準は、

(1)麻疹(検査診断例):発熱、発疹、カタル症状3つ全てを認め、かつ検査診断されている。

(2)麻疹(臨床診断例):発熱、発疹、カタル症状の3つ全てを認める。

(3)修飾麻疹(検査診断例):発熱、発疹、カタル症状のどれかを認め、かつ検査診断されている。

 

となっており、検査をしなくても麻疹と診断することもあります。

 

麻疹で注意すべきことが、合併症です。麻疹患者の約30%に1つ以上の合併症がみられます。下痢が最も一般的な合併症です。死亡例の多くは呼吸器合併症または脳炎によるものです。中耳炎は症例の5~10%にみられ、若年者に多くみられます。医療資源に乏しい環境では合併症のリスクが高く、症例致死率は4~10%にも上ります。

 

麻疹は二次感染として下痢や、肺炎などを起こすことがあります。また、免疫不全者における麻疹の合併症には巨細胞性肺炎や麻疹封入体脳炎があります。急性一次性麻疹脳炎もまれな合併症です。麻疹の合併症のリスクが高いグループには、免疫不全の宿主、妊婦、ビタミンA欠乏症や栄養状態の悪い人、高齢の人が含まれます。

 

麻疹ウイルス感染後の神経学的症候群には、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と亜急性硬化性全脳炎(SSPE)があります。ADEMは麻疹感染の回復期に発症する脱髄疾患で、感染後の自己免疫反応によって引き起こされると考えられています。SSPEは一般的に麻疹自然感染から7〜10年後に発症する中枢神経系の進行性変性疾患です。

 

麻疹の治療は主に支持療法です。支持療法には解熱剤、輸液、細菌感染やその他の合併症の治療が含まれます。重症の場合や、医療資源が乏しい場合にビタミンAが有効とする意見もあります。また、1歳未満の麻疹肺炎、1歳以上で人工呼吸を必要とする麻疹肺炎、免疫抑制状態の麻疹患者にはリバビリンの投与を行うこともあります。

 

では、感染を防ぐにはどのようは手段が有効なのでしょうか。最も有効な手段はワクチンです。

世界における研究では、小児における麻疹含有ワクチンの有効性は、1回接種で95%、2回接種で96%でした。

 

世界の麻疹ワクチン接種は、2000年から2019年の間に2500万人以上の死亡を予防したと推定されています。麻疹罹患率は2000年から2016年の間に人口100万人あたり145例から18例に減少しましたが、2019年には2016年と比較して5倍に増加しました。残念なことに、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の大流行中、何百万人もの子どもたちが麻疹ワクチンを接種できませんでした。その結果、2022年には麻疹患者が18%増加し、麻疹による死亡者は43%増加しました。

 

麻疹のアウトブレイクは、ワクチン未接種の人に多く発生します。麻疹含有ワクチンを2回以上接種した人に麻疹が発生した場合、1回しか接種していない人やワクチンを接種していない人に比べて重症度は低くなります。